臼杵有機農業推進協議会 いやさか 藤嶋祐美さん

ニンジンは種蒔きして芽が出るのが4~5日。うまく育つのはだいたいそういうスパンです。一週間以上かかるのは短いものしか収穫できないです。

 

 

 

「農業ほど難しいことはない」

 

出会った皆さん口を揃えて言われます。80歳の方もたった60回程度しか経験が積めない。試行錯誤は年に一回のサイクルです。

 

IターンやUターンされて大分で就農されていた方も沢山います。

 

前は都会で大手メーカーのサラリーマンで営業をして年間100億売上げていたような人も「サラリーマンとしてやることやってしまったから」とあっさり帰ってきたり、フレンチレストランで働いて大分産の野菜の魅力にはまって帰ってきたり、

 

優雅な都会生活を送られていた方が両親の残した農園を復活させようと努力されていたり。

 

 

 

これから定植予定のキャベツ・小松菜・ブロッコリーなど

 

藤嶋さんも(他の方に聞くところによると)高校時代は教科書を開かずとも成績抜群の天才肌の学生だったそうです。

でもあっさり30歳でUターンされて帰ってこられた。今は57歳。

約20年前は有機農業で就農される方はものすごく少なかったと思います。もちろん理解者も。

最初は趣味程度だったから、と言われていましたが。

 

「農業ほど難しいことはない」と言われる皆さん、同時に「農業ほど面白いこともない。だからやめられない。」と言われます。

 

今日お会いした藤嶋さんも「面白いんよ。でなけりゃとっくにやめてる」と。

100億の男も、解けない問題はないような学生だった藤嶋さんも魅了する「難しくて面白い農業」。

「水や空気の違いやおいしさに幸せを感じるけど、でもそれがそうでない環境もあるからこそ違いがわかる。

それって、どうなんかなあ。」

結局全て繋がっている、事に行きついてしまうということでしょうか。

 

冬のシーズンの植え付けが始まりました。

少量多品目。順番に植え付けていきます。

 

スケジュール管理が大変なのでは・・・。

 

農園を見せて頂いた時にお茶の垣根がありました。

自家製のお茶をごちそうして下さいました。藤嶋さんのお母様が作っていられるそうです。

それはそれはえらく手間がかかるとか。

このあたりの水は井戸水なので、やけにくっきりと味が分かりました。美味しかった!

 

「山登りの後、宿に帰って来て山の水で入れたお茶はものすごく美味しかった。

同じ茶葉でも東京の水ではちょっとちがったなあ。」

大学進学とともに東京に行かれて30歳の時にUターンして地元に帰ってこられたそうです。

有機野菜を作るのはもう20年近くになります。

 

 

これがお茶。

虫食いが無くてとてもきれいです。

そうであっても茶葉は固いです。

きっちょむ市場の責任者を今年外れたので、臼杵有機生産者のグループを立ち上げられたそうです。グループ名は「いやさか」

漢字では弥栄と書きますが、意味は「ますます栄えること」繁栄を祝って万歳!と同じ意味で「いやさか!」ということもある、とてもめでたい言葉です。

 

有機農業でちゃんと利益が上がるように、地域の横のつながりをもってみんなで栄えよう!

 

決まったばかりのグループ名だそうです。

初めてお聞きした時、勢いがあって前向きで明るい言葉だな~と感じました。

きっと会合の後には「いやさか!」で締めくくられるに違いない、と想像しました。もしそうだったらとても素敵です。グループの合い言葉、「いやさか!」いいなあ。

 

販売担当、河野さん。

藤嶋さんのもとで野菜の修行中です。

そのために選ばれた(期待されている)販売促進のためのスタッフ。河野さん。

有機農業や野菜の勉強をされるために来られています。

「野菜の味比べで驚きました。それぞれの生産者の方の特徴が出ますね。同じ品目でも味がここまで違うのかと。とても個性的です。」


ごぼうです。

もうそろそろ収穫?

伺った今日の畑にあったもの。

ピーナッツ・もちきび・にんじん・沖縄きゅうり・ごぼう・万願寺とうがらし・甘藷(甘太くんのべにはるか)・バジル・かぼちゃ

ネギなど。もっとあったかもしれないです。少量多品目で生産されています。

 

沖縄きゅうりは沖縄の品種です。

でも暑いところのものが順調に育ってしまう。そこで気候が変わったことを感じます。

 

今年はとても暑かった。なかなか植物が大きくなれない。ピーナッツも例年よりも育ちが遅いです。

最近は雨が続いたので種をまくと、ほうっておいても芽が順調に出ましたが夏場は毎日水やりで大変でした。

定植もある程度雨が降らないとうまく行かない。なかなか難しいです。いのししの被害を防ぐためにトタンで囲っています。


もちきびと手前がピーナッツ。

 

もちきびは食感が文字通りもちもち。

結構需要があるそうです。

 

 

 

 

 

収穫して、次の定植に備える準備は臼杵夢堆肥を使うそうです。

肥料という意味合いではなく、土壌改良のためのものとお聞きしていた夢堆肥。

具体的には土の通気性をよくしたり、保水力をある程度高めることが出来るとか。肥料としては鶏ふんや牛ふんの堆肥を使っているそうです。

 

大分県内のいろいろな土地に行きましたが、あくまで私個人が感じる印象として、臼杵は何かあっけらかんとした明るさがあるような気がします。畑も多いのですがものすごく日が当たってるというイメージです。

有機の里うすき宣言するだけあって、大手企業さんの有機農業への事業の参入や、合同事業の立ち上げも続き、新規就農の方の問い合わせも多々あるそうです。

  

にんじんの芽が出たばかりです。

「有機農業推進室」があって、室長さんが積極的に、ダイナミックに動いておられます。

地元の有機農家の皆さんと行政の窓口の「この方」というキーパーソンががっちり結びついて二人三脚で歩いている印象を受けました。

同じ方向を向いているのは間違いない、という信頼感。

 

臼杵が舞台の映画「種まく旅人」~みのりのお茶 の舞台設定の数年後が今のうすき有機の里なのかしらと思って伺いました。でも種をまいて実りが増えて全員で「いやさか!」と言えるようになるまではまだまだ時間がかかるかもしれません。

 

それでも目指す方向性がはっきりしていることが、目標を叶える一番大事な一歩だと気づかされました。

それがあるのとないのと全然違います。

 

関係者の皆さんの決断の速さにも驚きました。

 

 

 

沖縄キュウリ。色も茶色になるとか。

暑くなった大分です。

藤嶋さんはもし、有機農業に関心のある方がいるようだったらいつでも連絡してください。

ここでよければ、いつでも案内して説明しますよよ、と言ってくださいました。

最近、臼杵で新規就農して有機農業をされている若いご夫婦のお話を嬉しそうにされていました。

 

ものすごく手を掛けて有機農業作物を作ったとしても、その販路がないと生活が立ち行かない。

折角若い人が就農しても、ちゃんとした年収につながらないと地域にも定着しない。それが課題。

グループを作って、年間通してのスケジュールで生産物を供給してきけるようにしたいと思います。


 

 

 

すいません、無理やり持って頂きました。

ほんまもん野菜です。

「いやさか」さんは金色シールです。

佐伯は食育のまち宣言、臼杵は有機の里宣言、「食に対する意識のレベルが違うよ~」とお店の御客様によくお聞きしました。

10月、大分生活文化展の若草公園の会場を丸ごと使わせて頂いておおいたOrganic Marketを開催します。

 

10/11金曜日は「臼杵の給食の話」ワークショップ、臼杵特集です。

臼杵市役所 有機農業推進室室長と臼杵有機農業推進協議会会長の藤嶋さん、有機の里の認証無化学肥料・無化学農薬のほんまもん野菜を使った、こんな給食あったらいいなという岩田史絵さんによる理想の給食の試食。そして給食がこうだったらいいな、という給食への願いを発言する座談会のワークショップを開催します。何か解決策を提案できるような座談会ではないですが、まずは種蒔きです。「いろいろ思うことがある」その部分を学校でないところでお互い知れたらと思っています。

 

藤嶋さん、有機農業推進室室長の協力、岩田史絵さんの料理や素材への理解があって成立する企画です。

 

 

ねぎをお土産に頂きました。

やわらかい、風味があります。

「給食で積極的に使ってもらおうと思うけど、現場の調理師さんも大変です。

調理にかける時間は2時間半しかないです。もし野菜に虫がついていたらたとえば白菜だったら一枚一枚

丁寧にチェックも必要となります。そうなると間に合わない。」

 

給食センター方式だと配送の時間の分もあって2時間半。それが自校方式だと3時間になる可能性もありますが、

簡単にはいかないのが現状だそうです。

 

以前、子どもの保育所を探しに見学させてもらったら、保育園の給食のメニューを見て驚きました。

昔とは比べものにならない程、アレルギーの子どもが増えています。それを現場の栄養士さんや調理師さんがその子が他の子どもと食べるものが違うことで寂しくならないように、とことん考えて見た目や食感があまり変わらないものを使って用意されていました。その1か月単位のメニュー表の緻密さ。特に重篤なアレルギーのお子さんに対しては専用のメニュー表でそんな小さな単位でも食材全てが検討され、確認されていました。

その仕事に泣きそうになりました。命に係わることに責任を持って取り組んでいることがメニュー表全てに顕わされていました。

責任だけではなく、愛情がないと出来ないわ、これは・・・。とメニュー表をしばらく手離すことが出来ませんでした。

 

 

給食畑の野菜 農園には看板が立っています。

分かりやすくて素敵なサイン。

 

臼杵の農業関係のデザインは新鮮なものが多いです!

 

 

 

「臼杵は給食畑の野菜」というブランドがあります。地元の農家さんが子どもたちの給食の野菜を提供しています。

とても分かりやすくていい名前だと評判です。でも関わる全ての農家さんが有機農業をされているわけではないので有機野菜のブランドとしての名前になったら、というご意見もあったそうです。

 

でも今まで一緒にやって来た農家さんを分けるようなことはしたくない、と慣行栽培の方も有機農業の方も合わせて給食畑の野菜を作っていられます。

 

説明が必要かもしれないですが、わかりにくいかもしれませんが、私はそこを「分けなかった」ということが素晴らしいところだな、と思いました。

 

以前、給食畑にかかわる方が、子どもたちの体つくりを支えていることに大変喜びを感じて取り組んでいる、とお聞きしていました。やり方は違っていたとしても、子どもへの心は一緒です。

 

きっちょむ市場の責任者として有機農業だけを大事にしていると思われてもダメだから、と責任者を降りられてから初めて有機農業のグループを立ち上げるという周囲の方への配慮を忘れない段階を踏んだやり方。

 

調和して、お互いが影響しあって、変化していく選択をされていることがいいなあ、と思いました。

 

 

 

イノシシ対策のフェンス。

結構手ごわいそうです。

最近思うことがあります。

オーガニックマーケットを主催しておいて何なんだ、と言われそうですが、

「有機だからいい」「農薬や化学肥料を使う慣行栽培はダメ」とよい・わるい、というようなことは私には言えません。

 

食べ物をとにかく量産しなくては、と一所懸命に考えて努力して確立した今の慣行農業。それからその結果による変化が出てきて気づくことがあり、農薬や化学肥料を使わない農法を見直す人が現われて・・・と今も農業という分野に取り組む人間の

大きな流れの中の一つの変化に過ぎないのではないのかもしれないです。やってみないと分からないことだらけです。どうして批判出来るでしょうか。

 

私はだんだん自分がかたくなでなくなって来たなあ、と思えています。


 

 

多品目栽培で農園は

パッチワークのようです。

とてもきれいでした。

出会った有機農家の皆さんが何か優しいなあ、と感じられるのは実際に作ってみてどんな方であれ農作業がとてつもなく大変だと知っているからかもしれません。藤嶋さんのお話は全然大げさなところがありません。穏やかで落ち着いた印象です。

 

あと3メートルのところで道を間違えて迷ったため、藤嶋さんには結構呆れられました。

「都会的な颯爽とした感じの人だと思ったのに。わはは。」

ご期待に添えられずすいません。毎日テンパっています。

 

調和してうまくやっていく、そして変化する。

そんな風になりたい、血の気の多いわが身を振り返るとつくづく反省です。

藤嶋さんの作られた万願寺唐辛子、シャキッとして美味しかったです。