株式会社 アットファームくにさき 河野年彰さん

代表の河野年彰さんは、都会のど真ん中を普通に歩いていても全く違和感がない、背の高いいまどきのお洒落な青年です。体に小型エンジンを搭載しているかのように、広大な畑(約2町!)を飛ぶように動き回って案内して下さいました。

 

 杵築市の高台にあるアットファームさんの農場。あいにくの曇り空でしたが海が一望出来てとても素敵なところでした。 

なにしろ広くて、端から端まで見渡す限りの大根畑。馬場のぼるの名作絵本「きつね森の山男」に出てくる大根畑そのものです。青々と茂っていました。

 

 

 

葉は大根ではありませんが「きつね森」のイメージそのもの。

でも河野さんがその畑から抜いてくる大根の色は「白」だけではありません。

「黒大根」「赤大根」・・・赤は紫がかったものではなく、紅白歌合戦の「赤」。見たことがありませんでした。

黒大根も土が付いているわけではなくて「黒」

 カブも沢山ありましたがそれぞれバラエティーに富んだ品種を育てられています。

    

 

 

紫大根。辛味もあるきりっとした味です。

 

 

 

赤大根!

写真がぼけてすいません。

 

「前はもっとあれもこれも作ってたけど、ある程度絞り込んで得意なものを増やさないといけないかも」

「売れるようにしたい。ちゃんと利益を上げて行かないと。でも、手間暇かかっていても高すぎると消費者も手を出してくれないし、やっぱり買いやすい値段で食べてもらいたいのもある。」

「会社はまだ始めたばっかりでこれからやりたい事が山ほどある。」

「有機農業を始めたい、という事で沢山の人が力を貸してくれた。会社を成功させたい。」と言い切る河野さん。

 

 

 

 

 

    趣のある立派な社屋です。

    とても綺麗でした。

 

 

 

 

出荷作業場所の天井

とてもしっかりした贅沢な造りです。

河野さんは実は十五代続く農家の長男です。

大分を離れて、大学在学中から料理に興味を持って、実際にフレンチレストランで働いて、卒業後はそのまま就職されてずっと料理の世界にいたそうです。レストランでは有機野菜を扱っていたそうですが、材料をそろえるのが本当に一苦労だったそうです。 そこでいつしか実家の農場を継いで「有機野菜」を提供する側になりたいと思うようになったとか。

農園を飛ぶように歩く姿が、なんとなく厨房を飛び回る姿と重なりました。

 

 株式会社アットファームの事務所で、河野さん、河野さんのお父様、取締役の加藤さんとお話しをさせて頂きました。

河野さんのお父様は70代。加藤さんは60代。そして若い河野さん、三人の共通した見解は

「安全で美味しい野菜を作るのは当たり前。それをどう食べてもらうか。どうして「安全」が大切なのか。」

食と健康を意識した、消費者へのアプローチの仕方をそれぞれ考えられていたことでした。

 

     

 

 

 

なにしろ広大です。

みどりの畑の単位がひろい・・・。

河野さんは料理人の立場から、「どう料理したら体にとってよい食べ方で一番美味しいか、食べ合わせも含めて、研究して伝えたい」 料理人としても「料理をつくる人」の立場を考えられる方です。

 

 河野さんのお父様は「家庭の健康を司る主婦がもっと知識を増やしてほしい。旬の野菜が何故体にとって必要なのか。夏は体の熱を下げるきゅうりやなすが、冬は体を温める根菜類がそれぞれあることや、五味を味わう事など、毎日の食卓が「薬膳」になる事も含めて伝えていきたい。」「家庭の食卓が大事。サプリメントは中身でなく、加工する過程の添加物や外側が有害。私は三カ月で必ず調子が悪くなる。」

また、お父様は河野さんが生まれた時に「丈夫な体に育ってほしい。いいものを食べさせたい」というお母様の希望を受けて「有機農業」を意識するようになったそうです。

 

加藤さんは、乳製品のアレルギーを持つ4歳のお孫さんがいます。

「アレルギーは本当に大変です。給食の対応もみんなと同じものがたべられるか必ずチェックが必要。本当に少しでも原因のものが入っているとそのあとすぐに赤くかゆくなってしまうから。

無添加の表示が本当に無添加なのか。既製品の調味料の添加物のすごさとか。でも知っていても安全なものが広がらないのは、良い食材を食べ続ける事が出来ない、値段を基準に考えざるをえない事もあって、食べる側の妥協もあると思う。でもこどもはそうはいかんからね。」

アレルギーのこども自身や親のストレスをとても理解されている加藤さん。

 

 

「虫対策?

してないです。

しなくても出荷に問題ない野菜が出来るんで。」

とカブを抜いてくれる河野さん。

三人とも、「食べ物が口にした人の健康に影響する」事の重大さを伝えたい、

「何のためにたべるのかという意味」を何度も口にされていました。

 

それを分かり易く伝えるためのアイデアも沢山考えられていて、

お父様は「薬膳」のメニューをレストランで出したい、ハーブを沢山植えて、ハーブの薬効を伝えながらその場でお客さんにあったハーブを摘んで、ハーブティーを出したい。農園がそのまま楽しめる場所にしたい。

見学ツアーとかどう?うちは景色もよくて、見晴らしがすばらしいよ。」

 

 

 

海が一望できる素晴らしい眺め

(写真は河野さん提供)

私はもともと幼稚園から高校生までアトピーで、肘と膝裏に出来る、頭皮が荒れる状態がずっと続きました。

昨年の秋と今年の夏は悲惨で20年ぶりにアトピーが噴出して顔が二倍に腫れて、頭皮からはいつも体液がしみ出してかさぶただらけ、しかも全身にあせもを併発して痛く、安らげるのは眠っている時だけでした。

でも、これは解毒だと考えて、絶対くすりで抑え込まないようにしようと放っておいたら治りました。自分の好きな事を少しでも進めたせいもあったと思います。ストレスが大きな原因でもあると思いました。

 

 アトピーについて言えば、一番つらいのは「治らないかもしれない」という絶望感です。

でも、対処療法の薬ではなく、毎日の食卓に上る「食材の質」を変えるだけで治る事も出来る、そういう方法がある、という事を知るだけでも全く精神的には違います。私の息子も綺麗に治りました。

 

 「体は食べたもので出来る」「作っている野菜が食べる人の健康につながっている」

お野菜を作って売る人がそういう視点や経験を持っていることがとても心強い事だと思います。

 

 

海と畑 気持ちの良い場所です。

(写真は河野さん提供)

加えて、大事なお孫さんという身内に「アレルギー」があって、そのために「食に対しての深い知識がある」

河野さんというはつらつとした「若者」をスタッフと二人の「経験豊富な知恵者」が支える。

河野さん自身も「試食にコンソメで煮た大根を出したら、アレルギーのお子さんを持つお母さんに市販のコンソメは無理だと言われた。知らなかった」と、「知らない事がまだたくさんある」ことを、ふたりに「教えてもらいたい」ことを素直に言われています。

そして、消費者へのその伝え方とアプローチの仕方と「会社の利益をきちんと上げて行きたい」

そのために積極的に何でもやってやろう、アイデアをどんどん実現させよう、という気合が伝わって来ました。

 

私の個人的な考えですが、「有機農業」をして安全なお野菜を作って、特にお金が入らなくてもいいとしている人の生き方もあると思います。

でも「経営」をして経済的にも成功する生き方が本当は「有機農業」を広げる上で慣行の農薬・化学肥料を使って野菜を作っている人にも訴える力があるのでは、と思いました。その動機で始めた人が信用出来る野菜を作り続けることが出来るかどうかは別ですが。

 

 

 

 

農園を走り回る河野さん。

かなりお忙しい毎日だそうです。

経営的に成功する、それはアットファームさんにとって単に「莫大な利益を生み出す」ような成功ではないのではと思います。お金の前に、本当の「健康」のために、食べる人も幸せにするような食べ物を提供する、そんな成功を考えられているのではないかと思いました。

 

「父は70代だけど、あの年で先進的な考えとアイデアをもっている」とても尊敬しているのだと言ってくれました。

広大な畑に立って作業出来るスタッフは、実質3人。今日も河野さんは飛ぶように走り回ってると思われます。

 

写真提供 河野さん
写真提供 河野さん