久恒森林株式会社

「会社」って聞くと普通はビルか簡素な建物を想像すると思います。

それなのに私は、久恒森林会社さんを訪ねて、かつての炭坑王が建てたものすごいお屋敷の前でタクシーから降ろされ、ただただ唖然として立派な門の前で佇んでいたのでした。

 

 

久恒森林株式会社さんの商品で紹介させて頂くのは、一度も農薬散布を受けていない

オーガニックな森の木々から採取された「日本の森のアロマ」です。

 

 すっきりした素敵なデザインの緑のボトルに吸い寄せられて手に取ったエッセンシャルオイル。

初めてその香りをかいだ時、本当に落ち着きました。

スギの「木部」と「葉部」それぞれの全く違うさわやかさ。同じスギなのにここまで

特徴が違うなんて、と驚きました。森を知っている会社ならではの商品展開です。

またヒノキはそのままヒノキ風呂でくつろいでるかのようなそんなしっとりした落ち着きです。アロマテラピ―は鼻を通してそのまま大脳に作用すると聞きますが、私の場合、ヒノキは「あ、頭が今すっきりしている」と実感出来る程強烈でした。

最近、新しく加わったクロモジは「甘い」香りがします。和菓子を頂く時に使う楊枝としての利用が一般的ですが、もしかしたら昔の人はもっと敏感にこの「甘い香り」の魅力を味わっていたかもしれない、と初めて気付かされました。小さな楊枝を歯に挿んでそれも楽しんでいたのかも・・・と想像しました。

 

加えて、その香りを利用したエッセンシャルスプレーも開発されています。

オイルそのものに殺菌効果があるので余計なものは加えずにつくられています。

化学薬品でつくられた消臭スプレーを衣類や寝具に吹き付けているCMを見るたびに

そのケミカルな臭いを思いだして「うえっ」となる私にとっては魅力的でした。

 

 

 

 

 

 

針葉樹の清々しい香りが漂う久恒さんの森

さらに素敵なのが「森のトレーサビリティシステム」です。

商品についている製造番号をホームページ上の該当欄に入力すると樹種、部位、採集場所

採集日、林齢などが分かります。

 自分の手の中にある小さな森が、「しん」と静かにあるであろう、実際に存在している

森林とつながっている・・・考えただけでうっとりしませんか。

緑の濃い森が、心の中にふと立ち現れる、それだけで安らいだ気持ちになれます。

 一体、どんな会社がこんな物語のある、センスのある商品を作っているんだろうと

好奇心が膨らんでしまいました。

 

 

 

針葉樹の根元。

多様な植物があります。

そのすぐ後に、トキハの大分県の産物を紹介するイベントでまた商品に再会しました。

アロマ製品開発室長で(しかもあの素敵なラベルデザインを考えられた)小袋さんに直接お会いしてお話しすることが出来ました。「どうぞお気軽に、お越し下さい。森にも案内しますよ。」と言って下さったので思い切ってお訪ねすると・・・お屋敷が目の前に現れたのでした。

 

「この御屋敷に足を踏み入れていいのかどうか・・・。」と迷っていると、鉱滓煉瓦が施されたモダンな造りの近代和風建築の建物から「お待ちしていました。」とにこやかにアロマ開発を担当されている小袋さんと猪野又さんが迎えてくれました。

 

 

重厚な倉の扉

 

 

 

 

     高い天井と傘の収納

久恒森林会社さんは文字通り、林業の会社です。

森林を健全に管理・維持することが持続可能な自然環境に大きく影響する事をとても大切に考えて様々な取り組みをされています。

 例えば、森林の保水能力を保って土砂災害を防ぐためには、間伐して日光を当て、木や下草を育てるというような手間が必要です。

その時に出る間伐材を有効利用しようと開発されたのが「日本の森のアロマ」シリーズです。

 

管理する森林は、森林のオーガニック認証マークともいわれる、健全な森林(保水能力・生物多様性の維持・管理保護状況など)を現わすSGEC認定森林でもあります。

森林保護の先進国であるドイツやヨーロッパの厳しい審査基準に基づいています。

シカ・イノシシ・テン・キツネ・サル・タヌキ・イタチも実際にいるそうです。昔はイヌワシも見かけたとか。

 

 最近は住宅を建てる際の木材は安価な外国産が主流になっており、さらに円高が拍車をかけて、日本産の木は売れず、ハウスメーカーは安く強度のある集成材を使う傾向にあり、林業自体の成立が厳しくなっているそうです。

日本の森林は森林組合を作って国の助成金を受けながら、林業を何とか成り立たせている状況です。

「食べ物」ではない第一次産業なのでどうしても早急の対応がされて来ていなかった様子。

 

独立して個人が経営している会社は少なく「うちは絶滅危惧種」に近い存在だと言われていました。

 

 もともとの会社の成り立ちは明治に石炭を採掘するための木を切り出すために、耶馬渓の山林を購入したのが始まりだそうです。石炭採掘が終わって、林業の会社として経営されています。

 大正~昭和初期に造られたお屋敷は吉田茂や宮様もお泊りになった事もあったとか。

 林業の現在の状況や会社の事、アロマ開発のお話しや実際の製造の様子、そして30分も離れた耶馬渓の森まで案内して説明して下さいました。

 

 小袋さんのお話しは本当に分かり易く、しかもどこかの大学の先生をしてらしたのかと

思うくらい淀みなくお話しして下さいました。

 しかも何を質問しても全て、回答して下さる・・・。

 

 

 

 

台所は実験室です。

 

 

 

 

 

 

 

  水蒸気蒸留法で水とオイルがたまっていく様子が

  分かります。

実際に水蒸気蒸留法でエッセンシャルオイルを抽出している様子を見せて頂きましたが

本当に手作業!でした。

昔はお屋敷に勤める人が食事を作る場所だったという一角、つまり台所で専用の機械

一台のみで丁寧に抽出されていました。思わず「台所は実験室」という名著のタイトルを思い出してしまいました。工場ではなく、「あ、本当に小袋さんと猪野又さんが手作りしている」その現場がたとえようもなく魅力的でした。

「いろいろ試したんだけど、菜の花とかはダメだったんですよ。なんか漬物のにおいになる。

桜も期待したけどいまいち、松はよかったと思う。ヤブニッケイも。」

 

201012月に初めてオイルを販売出来ました。」と記念日を大事にされているように、発売まではいろんな苦労があったそうです。

森に向かう道中も中津が誇る偉人、福沢諭吉が日本ではまだ珍しかった森林保護のため、耶馬渓の森を買い取ったナチュラルトラスト運動を展開したため今の景観が残ったという事も説明して下さってガイドもして頂くぜいたくさ。

 

  

 

 

 

伐採現場 見えにくいですが20人分の仕事をする

機会です。

案内して頂いた森は、木を切り出すために「道をつくった」というすごい道を車で

上がったこところにありました。

50年前に植えた木がやっと50年たって出荷出来るという林業の気の遠くなるような長いスパンの話や、そうかと言ってその木を切り出すために、道を作って、機械をいれて、やっと搬出して売ったとしてもなかなか人件費も出ないような林業の厳しい現状って・・・厳しすぎるわ、と実感させるほど山深い現場でした。

 実際に見せて頂いた林業先進国の枝打ち作業20人分をやってしまうものすごい機械(約1000万円)が今はあるけど昔はよく人手と馬だけで作業出来たな、と林業の技術はすごすぎるものがあると思いました。今も機会が入れないところは技術のある「人手」が入ります。

 

外国産の木材が住宅に使われている昨今だけど、本当は家を建てる時に建てる土地と緯度の違う場所で育った木は使わない方がいい事や、

 スギは水場を好み、ヒノキは枯れたところを好むという適地適木の様子、

何がどのくらいの単位で売れるのかから、木々の生態までお話しして下さいました。

 

 

 

 

 

クロモジの群生地

クロモジの群生している場所に案内して頂いて、私もとても嬉しかったのですが

アロマ開発室のご担当のお二人である小袋さんの「ほらっ!」猪野又さんの「あった!」という様な活き活きとした様子が印象的でした。

 

 

 

 

 

軽やかに山に分け入る小袋さん。

森は針葉樹のさわやかで静かな香りが漂っていて、清々しい気持ちでした。

 

 山の周辺は彼岸花が咲く田畑が広がっていて「農業と林業の兼業」で森林が維持されて

いた昔を思い起こさせる美しい里山の風景でした。

 

 森から会社に戻ってから、奥様ともゆっくりお話しさせて頂きました。(いえ、ほとんど話を聞いて頂きました・・・)

私の好奇心いっぱいの心を汲んで下さったのか「迎賓館」だった母屋も見せて頂きました。

 

 

 

 

 

 

玄関に何気なく置かれた椅子。

欲しいです。

木造なのに天井が高い贅沢な造り、モダンに配されたタイルの洗面処、ガラスの質感が美しい照明器具、欄間、玄関の天井は樹液が滴るような木目。お庭と建物の配置にもたっぷりとした空間があって本当に迎賓館のようでした。あのお屋敷の中なんだ、と見せて頂いてとても嬉しかったです。今は造ることの出来ない財産である空間だと思いました。

 

 「アロマテラピ―の勉強をしていて、地元のこの会社の募集に応募したら採用された。

ここで働けてとても幸せ。」と、猪野又さんが言われていました。

 

 一体、どんな会社だろうと訪問させて頂いた久恒森林株式会社はとても魅力的な会社でした。

 

 お屋敷の中にある会社、煉瓦がモダンな造りの和風建築の中でひとつひとつ安全な方法で抽出されて手作りされる森の芳香。広大な森。

 沢山の物語がある会社でした。でも一番の魅力はそこで働くみなさんの雰囲気です。

奥様に代表されるような穏やかで、綺麗な話し方、それでいてホームページ上で「優秀社員」発表しているようなユーモアのある空気。

 お会い出来なかったのですが、実際に森に入って仕事をされる社員の方の個性豊かな来歴を少しお聞きしただけでも、面白そうな・・・。

三浦しをん作「神去なあなあ日常」の林業小説で予習してうかがったにも関わらず、

多分小説の登場人物よりもドラマチックな日常があるのでは、と想像してしまいました。

 

 

 

アロマ開発室 小袋さんと猪野又さん

「林業は大変ですよ」というお話しを聞いていたのにも関わらず、「ここで働けてとても

幸せ」だろうな~とぼんやり考えてしまいました。

 

 その魅力、私の文章力では伝えられません。

でも「森のアロマ」はそんな会社を想像する引き出しにもなってくれると思います。

 

男性にも似合う香りです。「ポケットに森林」をいかがでしょうか。  

   http://rokugatsuyohkanomori.jp/←商品はこちらで見ることが出来ます。