佐伯有機むすび塾 渡辺農園 渡辺英征さん 佐藤真知子さん

佐伯有機むすび塾は、6人のメンバーの皆さんで構成されています。

渡辺農園 渡辺英征さん 佐藤真知子さん、下戸農園 下戸友紀さん、工藤農園 工藤克己さん

原農園 原豊喜さん、清松農園 清松薫さん。

 

自然環境を守りながら、安全と美味しさにこだわった有機農産物を作りたいと集まったグループです。

メンバーのうち、約半数の方が有機JAS認定を申請して取得しています。

 佐伯のお弁当やさん「むすびや」さんの阿部恵さんの紹介で、渡辺農園の渡辺英征さん、佐藤真知子さんにお会いすることが出来ました。

 

 

 

 

 

 

 

畑の中の渡辺さんと佐藤さんです。

とてもきらきらした瞳で、身振り手振りを交えて、元気な声でお話しされる方だなあ、と思ったのが渡辺さんの第一印象です。

むすびやさんの阿部恵さんが、「こういう野菜がほしい」というと「じゃ、やってみよう」とすぐにチャレンジされる方です。お人柄か、楽しい雰囲気がどんどん溢れて来て、身を乗り出してお話しも聞いて下さって、私はずっと笑っていたと思います。

渡辺農園で一緒に野菜を作られているのは佐藤真知子さん。明るくて、とても可憐な感じの方です。

昔からご家族で家庭菜園をされていたそうですが、自分も作りたくなって、でも農薬や化学肥料は使いたくないので、同じ気持ちでいる渡辺さんのところでちょっと一緒に作らせてもらっている、とか。

謙虚に説明して下さいました。

 

渡辺さんは元銀行勤務で、定年退職後に野菜作りを始められたそうです。

植物を育てるのは大好きで、才能もあったようで洋ラン栽培の分野では本当に名人としても名高い方です。でも今はランの栽培はすっぱりやめて畑作りに夢中の様子。

「美しい花という評価で、花を大きくするとか、色を鮮やかにするとかいうのは簡単です。本当に簡単。肥料とかを研究するとすぐにできちゃう。だから肥料を研究するうちに肥料そのものにのめり込んでしまって。でも野菜を作ってみると難しくてやめられなくなった。」

 渡辺さんが洋ラン栽培をやめた時、ファンが多く、各方面から惜しむ声があがったそうです。

 

 

 

 

     今は昔・・・の蘭のための温室

 

 

 渡辺さんの肥料研究室・・・ラボです。

渡辺さんの肥料作りは完熟堆肥作りです。理系方面に全く疎かった私は研究職のような渡辺さんの解説がとても新鮮でした。

 肥料は米ヌカ、油かす、魚粉、おから、カキ殻、甲殻類のキトサン、灰、などと合わせて9種類の材料を混ぜ合わせて1~2カ月熟成させるそうです。

 最初はこうじ菌が発生し、次に納豆菌、乳酸菌、PHを調整すると酵母菌が出来て最終的にはアミノ酸分解されてホウセン菌になるそうです。ホウセン菌は農産物に病気を寄せ付けない作用があるとか。においは酵母菌の時点で味噌や醤油のような香ばしいにおいになるそうで、これが腐敗の過程を辿ると全く違うものになるそうです。

 最終的に出来たアミノ酸は、栄養分のみを畑に入れるそうです。試行錯誤の連続で大変だったようですがご本人は「楽しかった」らしいです。うまくいかない時は何故なのか、その理由を辿るのもまた楽しいと。

肥料の材料を調合する場所には、大きなかくはんの機械があってそれでなければとても間に合わないくらい大量に作るそうです。材料が山積みになっていました。

また、黒々とした堆肥をトラックで畑に運び入れて、ビニールシートを丁寧に被せています。

雨に当たって栄養分が逃げないようにとのことでした。

 

 

 

 

 

 

 

       肥料の材料を撹拌する機械です。

 

 

 

 

 

丁寧に説明して下さいました。

お忙しいのに畑にも快く案内して下さいました。

畑にはひよどり避け対策の網や脅す道具などもところどころ置かれていました。

「ひよどりは結構食べて行きますよ」と虫対策だけではない鳥対策の苦労が。さらに他の畑に伺うと周囲を2メートル木の棒で囲って網を渡している念の入れよう。

鳥に加えて鹿、猪対策だそうです。佐伯に鹿が・・・。しばし呆然としてしまいました。

でも動物も渡辺さんの畑を「狙って」来るそうです。

 

 動物はどうも味には敏感なようです。

むすびやさんの知っている犬は有機栽培の野菜なら食べるそうです。しかも基本は肉食なのに・・・。

渡辺さんも佐藤さんも味覚はどんどん敏感になって行き、外食したレストランで食べるサラダは薬品のにおいがして食べられないこともあるそうです。

 

 

 

珍しい紫芽キャベツ

 

 

    

 

    鳥対策・霜対策の網の中でけなげに育つ

    ベビーリーフです。

渡辺さんが何度も言われていて印象に残ったのは、生産する野菜の「おいしさ」のことです。

「美味しさ」を追求したい。安全・安心はもう大前提で美味しさを表現したい。難しい。

 

 美味しいというのは、単純ではなくて「甘味・辛味・苦み・酸味・旨味」の五味がバランスよく

感じられること。それを肥料を工夫しながら試行錯誤して納得いく味にしたい。

 

 メンバーの中には大学との共同研究をされるような学究肌の方もいて、お互いに情報交換しながらよいところを取り入れて研究されているそうです。それぞれやり方もスタイルも違う職人のようなところがあるそうですが、目指すもの「安心・安全」と自然環境を守ることが大前提という共通の認識で強く結びついているそうです。

 そして、食べる人と作る人である消費者が何を求めているか、どんなものが食べたいのかその情報を常に取り入れようと努力されています。積極的に消費者の方との情報交換もされています。

 

 

 

 

 みどり大根。

 中身も外側と同じように緑です。

有機JAS認証を取った際の苦労もお話して下さいました。

何しろ提出書類の量がものすごく、解説を受けながらほぼ缶詰状態で書きあげたそうです。

農産物の生育記録も大変で、渡辺さんは個人的に記録していた作業日誌があったので何とか申請書類をそろえられたそうです。有機JASの取得の前の申請書類を書きあげるだけでも大変な負担だと言われていました。

 でも消費者に自分たちが生産している農産物はどのようなものなのか、分かり易く伝える手段として取得されたこともあるようです。

 

渡辺さんはとにかく「手作業が多いのが有機農業。人手が足りない。仲間がまだまだ欲しい。

そして後継者になってくれるような若者がもっと農業をしてほしい。」と言われていました。

 佐藤さんも「そうなの。夏場に草がものすごい勢いで生えるんだけど、若い人に一日でもやらせると次の日にはいなくなるわね・・・。」と言われていました。

 若者でさえ逃げ出す過酷な夏場の農作業を少女のような面影のある可憐な佐藤さんは乗り切っているわけだ・・・と私は内心、驚異を感じていました。

 

 

 

農園の一部です。

まだまだ広い・・・のです。

小麦の栽培予定です。

訪ねた時は結構寒い日で、渡辺さんの畑も霜でたびたび芽が出なかったりするそうです。

虫だけではなく、鳥は空から狙うし、イノシシどころか鹿まで高い柵を軽々と飛び越えて畑に入ってくるような環境。でも、たくましく楽しくあきらめずに「食べ物」を日々、作っておられます。

 

 

 

無事に芽が出てくれることを、

育ってくれることをいつも祈っているそうです。

私は実は三歳から幼稚園にあがるまで佐伯の蒲江に暮らしていました。幼いながらに大切な思い出がある地域で、今も印象は「海の町」です。

 でも今回、佐伯市を訪ねてこんなに有機農産物に関係する方がいることにとても驚きました。

しかもみなさんが専門的で、それでいて、ただ自分の畑の中にいるのではなく、積極的に仲間と消費者と、料理をする人と繋がっていこうという活動をしている。

 行政が主導して「指導」をしているのでも何でもなく、ただ自然にそういう雰囲気や人間関係を築き上げて行っているのが本当にすごいことだと思いました。

 

  安全・安心な美味しい食べ物が佐伯では近い将来、自給率100パーセントになるかもしれません。

「あちらで小麦を育てます!」張り切って案内して下さった渡辺さん。

 

 来年、その小麦でパン屋さんのよつばの天使さんがパンを作り、むすびやさんの阿部さんが佐伯の海から採れた塩を使って作ったおかずを作り、佐伯有機むすび塾の皆さんの野菜を挟んだ、サンドイッチが食べられるかもしれません。。

 

さらに佐伯有機むすび塾は「もっと自分たちで育てた野菜の味を知ってもらいたい」と全て有機野菜の材料を

使ったお弁当の販売も始めるそうです。

「佐伯産の美味しいお魚も入れたい。安全な飼料と環境で育てられたお肉も探しています。」

楽しそうにお話して下さいました。また、新しいチャレンジを始められます。

 

 

佐伯有機むすび塾を含めた「チーム佐伯」。今回私が出会った皆さんはとても明るい顔をされていました。私の憧れのチームです。