今のこどもたちにも川に親しんでほしい。川遊びを思い切りしてほしい。そういう思い出がふるさとや自然を敬うことに繋がると思うから。
天然うなぎのおいしさも川の恵みの一つ。味わう経験を子どもたちにさせてあげたい。
もしかしたら一生、この味に巡り会えないかもしれないから。
幼い頃、一番好きな場所が、阿蘇野の「男池」(おいけ)でした。事あるごとにどうにかして連れて行ってほしいと両親に頼み込んでいました。
こんな美しい場所が世の中にあるなんて信じられないと思っていました。
黒嶽荘の吹上そうめん、天然水のサイダー、ずっと見ても見飽きない庄内神楽など庄内町にはなぜか惹かれるものが沢山ありました。
マーケットを始めてからも庄内に拠点がある方と知り合って、いつもいい人やな~と感じる方が多かったので、何かご縁があって嬉しいなあと思っていました。
今回、出店して頂く平尾さんとは私の父がたまたま道端で知り合った人です。(父はそういう事がやたら多い人間です。)
なんでも器用にできる方で椅子の張替などもお手の物です。
そして知り合いが繋がっていたためマーケットのお話になりました。
神秘的です。
写真提供は平尾さん。
今回が長梅雨で伺うのが
難しかったです。
夏の間にぜひ!
平尾さんは生まれも育ちもずっと庄内です。お仕事も自営業をされながら地域の活動に積極的に関わっています。
バトミントンの指導者でもあります。そして漁業組合員でもあります。年会費をきっちり治めながら楽しく川の季節恵みを味わっている方です。
天然うなぎが大分市内にほど近い川で取れると聞いて驚きました。
イメージがそんなに清流ではない気がしてましたし、川遊びは好きでしたが「私の通う川」というものがなかったのでどこでどのように取れるのか全く予想がつきませんでした。
「ポイントはあります。阿蘇野川は水が冷たくて綺麗です。お腹が黄色い天然うなぎが沢山取れます。
重さも600~900グラムも。重さ太さ共に申し分ないものが。川によって味が全く違う。長年、川で遊んでいるとここで取れるな、というポイントが分かってきます。」
つけばりを使って仕掛けを仕込んで、引き上げるというのが定番です。
平賀源内先生のキャッチコピーのおかげか、夏場のもののイメージが強いですが実は一年中取れるそうです。
でも一番美味しいのは10月。9月末からは水があまりにも冷たいのでウェットスーツを着て漁をするそうです。
3月末から10月末までが漁に適していて、やっぱり冬場は寒いしうなぎも動かないので取ることは難しいそうです。
毎年、漁協ではうなぎの稚魚を放流しているそうです。
ただ稚魚は限られ種類サメの卵しか食べないので稚魚の養殖はかなりのコストがかかります。
成長すると川を下って海に行き、世界一の海溝マリアナ海溝で産卵する、そしてまた川に帰ってくるという説があります。
淡水、海水の間を行き来して、地球規模の長い旅を重ねて戻るなんてすごい生き物です。
まだその生態は謎に満ちているとか。
実際、生命力は強い生き物で体のぬるぬるとした粘膜が乾かないかぎり、水が少なくても生きているそうです。吊り上げたら袋に入れて持ち帰るとか。
また、そのままうなぎを捌くのは手が滑って大変なため、冷凍庫で少し凍らせてするそうですが、1日くらいの冷凍では、水に戻した途端、動き回るとか・・・。平尾さんも最初は驚いたそうです。
苔の緑が鮮やかです。
冷たい水で魚・うなぎの身もしまって
とても美味しいとか。
高冷地野菜も実がしまって美味しい。
共通するものがあるかしら。
川に親しむ平尾さんのお話は、私にとって相当わくわくするものでした。
「川はそれぞれ全然色も違います。栄養のある川とそうでない川はすぐわかる。そして生き物の育ち方がまるで違って来ます。一番わかりやすいのは川苔の色と量。ミネラル分が多い川の苔は本当にきれいで鮮やかな緑です。
大野川、三隈川、玖珠川、白滝川は本当にきれいです。鮎を放流していますが、ちゃんと川苔を食べて30センチくらいの大きさのものに立派に育ちます。
中でも番匠川は四国の四万十川にも負けないくらいの清流だと思います。
そういう川は山の管理をきちんとしている場合が多いです。
山の栄養が川を通じて海に入るのですから。」
平尾さんのお話は実際に川に入っている方の実感です。
昨年の大雨の影響を受けて、今年はホタルの姿が少なかったとか。エサになるカワニナが流されてしまったのが原因かもしれない。
アブラハエという魚は春から6月いっぱいまでしか取れないけど川の水が汚染されたらいなくなる。でも多い時には1時間で100匹は釣れたり。
今は禁止されているが、子どもの時「カナツキ」という突き棒で魚を潜って取ったこともあったとか。
深い淵に何度も潜って、おっとりした大きいウグイなどを油断させて捕る。鯉もいたそうですがものすごくウロコが固くて突き棒では無理だそうです。
鯉なんて今まで何度も見たはずなのに、触ったことがない。自然の姿でいるところ、生活のしかた、特徴など何一つ知らないし、私は「見ていない」ということに気が付いてびっくりしました。
平尾さんは「それが普通です。今の小さい子どもがいる世代の親自体に川遊びの体験がない。でも今からでも一緒に楽しんでもらえたらいいんだけどね。」
「川で遊ぶと、成長してから川に空き缶やゴミを投げ捨てることなんて出来ない大人になると思うんだけど。意識しなくても自然にそういう感覚になると思いますよ。」
庄内の川も一時期、川の汚染がひどく平尾さんが中学生の時、遊泳禁止になっていたそうです。
でも地元の方の努力でよみがえったそうです。
「災害に備えて護岸工事をすることもあるけど、あの護岸工事が生き物のバランスを崩すこともあります。人間の予想を上回ることが自然の力です。」
そういえば、小学生の時に親しんだ川が護岸工事になることになって寂しい、と新聞に投書した覚えがあるなあ・・・。工事が終わったあと、川遊びするには生き物の姿が消えてつまらんな、と思ったことが。
宇佐のどん百姓の堀田さんも、幼い頃に田圃などで思い切り遊んだ。その時の楽しい記憶があるから農薬とか化学肥料を使う発想にはならなかったと言っていたのを思い出しました。
竜の寝床の淵はもっとすごいそうです。
知っている人も少ないとか。
「こわい」部分もあるからこその川の魅力。
どこにでもボーダーラインはあると思いました。
阿蘇野川の奥には竜の寝床のような畳千畳敷くらいの大きさの丸い巨大な淵があるそうです。
「竜の寝床みたいです。ほぼ垂直のがけを降りていかないとそこまでは行けない。本当に静かで神秘的な場所です。」
そこでは、ヤマメは30センチ単位に育って、のどが黒く、身が綺麗なサーモンピンクになっているそうです。
うなぎもつけばりを仕掛けて石で固定して次の日に引き上げるそうですが、大物がかかることがあるのか根こそぎなくなっていることも何度かあったそうです。
そのお話を聞きながらうっとりしました。
日本昔話の世界ではないですか!きっと淵の主がいるに違いありません。
平尾さんも「夕暮れまではいません。夢中になって釣っていても背中がゾクッとすることがある。そうしたらどんなに釣れていてもすぐに帰ることにしています。なんか合図かな、と思って。」
そういう感覚は自然の中で磨かれていくのか、自分の事を自分で守るための大事な感覚だと思いました。
自然の中に入る、生きる、そういうことがこれからもっともっと見直される気がします。
森の中、山の中など不確定要素があまりにも多い中で過ごすと、「予定通りに言って当たり前」「できて当たり前」がどんどん少なくなって行くような。そして人への要求も期待もしなくなるような気がします。そして頭だけで行動しなくなるというか。
私が出会っている自然の中で生きる人は全然人に期待せず、責めず、本当に優しい人が多いです。
「こうなるはず、から離れると今の瞬間を感じることが出来る。そうするともっともっと楽しく生きられるよ。」と言われたことが何度もあります。平尾さんとお話していてその言葉がよみがえってきました。
3月はワカサギも取れるそうです。朝3時から出かけて投網で(もちろん許可取得スミ)取るそうです。
産卵のために相当早いスピードで川をさかのぼっていくらしいです。地域の人も楽しみに川に入るそうですが
出来るだけ平尾さんは他の人の網より上流で漁をするそうです。
「一番取れるところで沢山、というのはもういいです。みんなが楽しんで、こぼれたさかなを少し頂く程度で十分。」
先日、大分市内の浜町の恵比寿神社の奉納神楽を見に行きました。
40歳から始めた平尾さんもそこで庄内神楽を舞っていました。とっても優雅でした!
しかしここでもおろち退治の舞台の袖で、おろちの胴体を整えたり、口から出る花火に点火したり、それと同時に舞台の照明を消したり、装束を着たまま裏方で八面六臂の大活躍・・・。
人柄が顕れる舞台だなあ、と思わず笑えてしまいました。
天然うなぎは今回、沢山のかたに持ち帰って頂ける量は確保出来ませんでした。
でも少しの量をみなさんで分かち合って楽しめたらと思います。
炭火で焼いて由布つちまみれの会の古長さんの庄内米と一緒に頂きます。
庄内のゆず胡椒も添えて。庄内特集です!
10月の本当に美味しい時期にまた登場頂く予定です。
近くにそういう場所があることがおおいたの魅力の一つだと思います。
しかけの仕方、本物のうなぎ、平尾さんのお話は何より魅力だと思います。
庄内という地域の魅力は人によることが大きい、と感じられると思います。