うちはら家 内原由季さん

うちはらさんのお料理教室は別府のご自宅で開かれています。

一人か二人を対象にその人が知りたいこと、作ってみたいものをまず聞いて、教えてくれます。

「アトピーでも体の負担にならない米粉のパン」

「フライパンで作るスコーン」

「ごはんの親友、なめたけ」

「天然酵母の起こし方 ほしぶどうと玄米を使って」

「葛粉のとろとろゴマプリン」

 

一番、知りたかった「玄米を美味しく炊く方法」

圧力鍋でも炊飯器でもないやりかた、をずっと知りたかったのですが「土鍋で簡単に炊けますよ」と

教えてくれました。

土鍋で炊くごはんは特別なことではなく、内原家では日常の風景です。

お料理教室はすぐ近くにある、由季さんが丹精した畑から材料を調達してくるところから始まります。

畑にある立派な梅の木が実った時も梅干しに。味噌作りはもちろん、なんと醤油まで手作りです。

 

「作ってみてわかりました。水の質がとても大事だということが。醤油はほとんどが水。水の量はすごいです。」

うちはら家では毎朝、近くの神社の湧水を水がめに汲みに行くそうです。

 

 

 

自然の道具が整然と収まった台所

 由季さんに初めてお会いしたのは大分の若草公園でのイベントです。

私は由季さんが持っていた手つきのハンドルのついたカゴが気になって話しかけたのですが(いつ、いかなる時も物欲が衰えない私・・・)外国で買ったとか。とっても雰囲気のあるセンスの方でした。

テントを張っていて「絵本を読もうかとおもって」と言われていました。「読み聞かせ」って言わないところがなんだか

素敵だなあ、と思っていると今日焼いたというビスコッティを頂きました。

香ばしくて美味しくて、2つももらってしまいました。初めて会った人に食べ物をもらって話すなんてなんだか私、幸せだな~と思ったのを覚えています。原始的な出会いかもしれないです。

 

由季さんは、もともとご出身は大分ではなく、四国です。愛媛の大きなメーカーで働いておられて、カメラ設計のエンジニアだったご主人と知り合われたそうです。本当に出張で残業で毎日が忙しくて大変だったそうです。

会社の敷地は広大で、ある時「一定の速度以下で歩くと警告音が鳴る」という機械が廊下に取り付けられたそうです。

それで会社を辞める決意をしたとか。お子さんも生まれて人間らしい生活を取り戻したかった。というのもあったそうです。しかし、旦那さんの様子を見て常々奥さんのほうが「仕事やめたら?」と言っていたそうで、なかなかそう言える奥さんもいないのでは・・・と思います。

「竹職人」はどうかな、とひらめいて本を買って提案したのも由季さんだとか。

 3年間の修行が終わって、独立された旦那さんの「くらしの道具」としての製品はとても美しいです。

丁寧に丁寧に編まれた竹のカゴやザル。

台所で使うと「こんな素敵なものを使っている私」と嬉しい気持ちにもなると思われます。

また、お米が編み目に詰まらない「米研ぎザル」は評判で今年の夏まで予約待ちだそうです。

 

 

綺麗に乾くように天井近くに置き場所が

(置き場所も旦那さん製作)

古い家を直して、旦那さんが土間を作り、薪ストーブの暮らしです。

畑があって、味噌と醤油をつくり、電子レンジではない方法でパンも焼ける。お水は湧水をつかって

土鍋で炊いたご飯を炭火で焼きおにぎりにする・・・。糠漬も美味しいし、ムカデにさされたら焼酎に漬けた

特効薬がある。包丁で指を切ったらヨモギで手当して血止め。(これは私のことです。治療してもらいました。)

 

 旦那さんは「工芸品でなく、暮らしの道具を作りたい」と言われます。家族で目指すものは一緒。

毎日の豊かな生活と仕事が繋がっていることが素敵だと思いました。

由季さんの台所には旦那さんの作られた「試作品」やどこが失敗なのかちっともわからない「失敗作」など

沢山あります。でもいつも口癖のように旦那さんが「こういう工夫をしてくれた」「必要なものを作ってくれた」

「不便な部分を考えて便利にしてくれた」と感謝の言葉がさらりと出て来ます。

 ・・・息子が大きくなったら、こういう奥さんに巡り合ってほしいなあ。

 

 

 

 

       憧れの薪ストーブ!

       米糠を炒っています。

 

       火も操れる女の人です。

 

       いいなあ。

「好きなこと、楽しい事を仕事にしてはいけない」とよく昔から言われました。

道理は何となく分かりますが、「仕事にするには好きなこと楽しいことが一番」だと思うようになりました。

 

 由季さんは昔ながらの智恵を生かす暮らしを続けています。

薪ストーブの火をおこしたり、水がめに毎朝水を満たしたり、土鍋で時間を掛けてごはんを炊いたり、

正直手間がかからないとは言えません。

でも、毎日の暮らしで新しい発見があるようでいつも眼を輝かせて話してくれます。

楽しくて仕方ない、という気持ちが伝わってきます。

 

土鍋で炊くごはんは玄米を固すぎずやわらかすぎず、負担にならない食べ方を助けてくれるし冷めても美味しい。

土鍋の保温力で高熱費用は少なくて済むし、食材にじわじわと熱が通ってやさしくて美味しい味に仕上げてくれる。

ストーブの火をおこして炭を作ると手あぶりの火鉢で焼きおにぎりが出来るし、鉄のフライパンと網でスコーンのような

電気のオーブンで作っていたものでさえ出来る。

 

 手間なようでいて、実に合理的で環境にも負担をかけない暮らしをされています。

これからの世の中に少し危機感を持っている私は「フライパンで」というサバイバルな智恵に惹かれました。

そしてまた、昔の暮らしを実践していて思わぬ「先人達の智恵」を再発見する喜びを感じておられるのでは、と思いました。そうして気が付いた智恵をおしみなく、分けてくれます。

 

 料理教室も「教えてほしい」という声があがって、自然にご自宅で始められたそうです。

「イベントではなく、毎日の生活の中で取り入れられるような、その人が本当に必要としているものだけお伝えしたい」

私のうちでは牛乳を使わずに作る「里芋のポタージュ」は定番になりました。外はカリカリ中はしっとりのフライパンで焼くスコーンもオーブンレンジで焼いたものよりも美味しく感じました。

 

 

 

 

 

 

 オーガニックマーケットワークショップの由季さん

 割烹着が似合います。

その人が必要としているものを。

決まり切ったレシピやスケジュールはありません。

実際にアトピーで悩んでいられる方も教室に来られて「食べられるパン」を作られているそうです。

「食べ物で全ては解決できないけど、食べ物の影響はとても大きいと思う。そして、美味しい たのしいと

いうことが大事。」と言われていました。

食養生でアトピーなど治療をすると、どうしても「体にいいから」「治療のためだから」と我慢して頑張るうちに

本来の「美味しかった」「楽しかった」という食事の素晴らしさを忘れてしまうことがあります。

私も真面目に取り組んでいた時に、目の前のことしか見えなくなって常に食べたいものも「我慢」でストレスが

たまってしまったこともあります。

 

 由季さんの教室に、おうちに来るとたとえアトピーで悩んでいてもそれを刺激しない、悪化させない

安全な食材で「美味しく」食事が出来ます。じんわりとしみるおいしさ。こういうのが「滋味」っていうのかも

とまだアトピーが辛い時期に伺って温かい気持ちになりました。

 

 無農薬・無化学肥料だから選ぶ。ということも大事ですがその前に丁寧に作られているか本当においしいものか。

よく味わって観察されています。

 山香の掛け干しのお米の風味や香ばしさ。粉が石臼挽きだと粉そのものが味わえること。

塩の選び方。味に敏感になることは、不自由なことではなくて、楽しみが増えることかも、と思いました。

 

 将来は、愛媛県に帰って友人のご家族とコミュニティを作られるそうです。

夢ではなく、具体的な計画でそれぞれ左官職人の修業に出たり、竹職人になったり、と準備されていて

場所も決まっているとか。由季さんはもちろんお料理教室をされます。

 まだまだ別府にいてほしいです。引けるうちは、思い切り後ろ髪を引いてみようと私は思っています。

 

 

           ごはん

           味噌汁

           漬物

 

     とても大事にされています。

オーガニックマーケットでは「お米が大事。まずごはんの食事を。」という由季さんにお願いして

お楽しみのためのおやつも作って頂きました。安心できるおやつってなんだろうと思っているかたにも、市販の袋菓子以外の選択を探している方にも、きちんと説明して紹介して下さる方です。

 カルシウム豊富なスギナを「ほんのり抹茶味!」の美味しいビスコッティに出来る人はそうはいません。

 

 一回目のオーガニックマーケットでは「土鍋で炊く玄米ごはんとおにぎりとごはんのおとも+食養生の梅醤番茶を

作るワークショップをして頂きました。

毎日作るごはんでも、道具が違うとまた味が変わるし、段取りをきちんとしなければ。日常に持って帰ってもらいたいと

何度も試作をされてガスコンロの癖まで見抜いて、研究されていました。

 

誠実な方です。そしてとても愛情ある人だなあ、と思います。